気になる…どのくらいの医者がタバコを吸っているのか?

近年の健康ブームにより、テレビやインターネットなどに医師が専門家としてコメントする機会をよく目にするようになりました。病気を診てくれたり、健康に関するアドバイスをしてくれたり、医師は私たちの健康に欠かせない存在でもありますね。
そんな健康の専門家である医師の中にも、タバコを吸っている人もちらほら…。禁煙に興味がある人の中には、あれ?っと思っていた人もいるのではないでしょうか。 そこで今回は、医者とタバコをテーマに調査してみました。
1.禁煙紫煙の役割が大きい医師たち
禁煙をはじめる大きな理由として挙げられる健康への害。健康情報があふれている現代では、今や多くの人が「とりあえずタバコは体に悪いんだ」ということは認識しているでしょう。その情報の発信元の1つとなっているのが、医師も加わっている学会や医師が提言を行うこともある厚生労働省です。
タバコを吸っている人にとっては、耳に痛い情報を流し、タバコの増税など時には厳しい政策の引き金に、全く関係のないとはいえない医師ですが、彼らのすべてが非喫煙者というわけではありません。健康への害について詳しく知りながらも、タバコを吸っている医師も多くいるのです。
2.意外に少ない!医師の喫煙率
一般人が禁煙を達成させるのにも重要な役割を持っている医師ですが、彼らのすべてがタバコを吸っていない…なんてことはないのは、あなたも薄々と気づいているはず。実際に医師のうち、どのくらいの割合がタバコを吸っているか示したデータがあります。
日本医師会の会員である医師を対象に、アンケート調査を行ったところ、次のような結果になりました(※1)。
- 男性医師の喫煙率は12.5%
- 女性医師の喫煙率は2.9%
この統計内容は2012年のものですが、厚生労働省が発表した2016年の日本国民全体の喫煙率は、成人男性が29.7%、成人女性が9.7%(※2)。国民全体の喫煙率よりはかなり低く、さすが!という人もいれば、まずまずかな…と思う人もいるのではないでしょうか。
3.以前はもっと高かった医師の喫煙率
一般人と比べてみると、喫煙率の低いとされる医師ですが、数年前までは一般国民の喫煙率と、さほど変わりのないものでした。
そもそも日本医師会がなぜ医師の喫煙率について調べ始めたのかというと、当時世界の健康を総括するWHO(世界保健機関)より、「医師はタバコを吸うべきでない」というコメントが出されたことがきっかけでした。日本医師会は2000年から会員である医師の喫煙率の調査に乗り出したのです
確かに、国民の健康を守り助言を行う立場である医師には、健康の見本となってほしいですよね。当時の医師の喫煙率の推移について見てみましょう。
男性医師 女性医師 |
2000年 27.1 6.8 |
2004年 21.5 5.4 |
2008年 15.0 4.9 |
こうしてみると、2000年当初は、医師の喫煙率はそれほど低いわけでもなかったということが分かりますね。一方で、政府のタバコ政策だけでなく、医師会内でも医師に対するタバコの啓蒙もあってか、男女の医師ともに順調に喫煙率が下がっていることが分かります。
4.医師の喫煙率を診療科別に見てみよう
一般人もお手本にしたい、医師の喫煙率ですが、診療科ごとにはどのような違いがあるのでしょうか。医師の診療科別の喫煙率は次のものになります。
グラフを見てみると、男女ともに、呼吸器科の医師では比較的喫煙率が低いことが分かります。禁煙では、未成年や妊婦の喫煙問題がよく挙がりますが、指導立場でもある小児科や産婦人科でも、一部の医師が喫煙しているというのは、驚いた人もいるのではないでしょうか。
男性医師では、泌尿器科や精神科、整形外科で喫煙率が高くなっています。女性は全体的に喫煙率が低いものの、外科や整形外科では喫煙率が高めになっています。
5.医師が喫煙しやすい状況は?
人間の命を扱う医療現場は、責任やプレッシャーも大きい仕事の1つです。医師の給料は高いといわれても、病院の勤務医であれば拘束時間も長くなるため、時給にすればそれほどでもなかった…という話もよく耳にします。
なにかとストレスの多そうな医師ですが、タバコを吸ってしまうリスク要因には、次のことが指摘されています。
・夜勤当直が多い
日本医師会で行われた医師への喫煙に関するアンケートに関しては、夜勤が多いほど、喫煙率も高くなるという結果になりました。
・労働時間が多い
医師はとにかく休みがないといわれる職業の1つです。患者さんの状態が急激に変化したり、急患があれば、残業することもしばしば。医師への喫煙に関するアンケートでは、労働時間が多いほど、喫煙率が高くなる傾向がありました。また、休日が少ないほど、喫煙率が高くなるということが分かりました。
以上を総括をしてみると…
日本医師会のアンケートの結果を見てみると、やはり医師の重労働の環境が、喫煙率に影響を与えているといえるのではないでしょうか。
6.禁煙が難しいのは、医師も同じ
実は筆者も医療職として、病院に勤めた経験があります。実際に、職場の医師の中にも、「休憩中にタバコを吸っていたな」と思わせる人もいました。医師に禁煙を指導された経験のある人なら、「ありえない!」と思う人もいるでしょう。
しかしながら、医師といっても同じ人間。彼らも、タバコの害を知りつつやめられない人もいるのです。(もちろん、医師の中には、健康への害を受け入れた上で、喫煙している人も少なからずいるかもしれません。)
私の知っている医師も、タバコを吸っている一般人の人と同じように、「タバコをやめたい」と話していました。彼は、しばらくすると自分の腕にニコチンパッチを貼って、禁煙に励んでいました。医師なら自分で薬の処方もできるので、専門職ならではという感じですね。医者のくせにタバコを吸うなんて…というよりも、医者も私たちと同じなんだという認識で、応援したいものです。
7.おまけ:医師ではなく医療従事者の喫煙率は?
医師の喫煙率を見てきたところで、ほかの医療従事者はどうなのか?…と気になる人も多いのでは?最後におまけで、そのほかの医療従事者の喫煙率について簡単にまとめてみました。
下に挙げるのは、栃木県医師会が調査した医師以外の医療職員の喫煙率です(※3)。放射線技師では、日本国民の喫煙率より高いことや、看護師では女性の喫煙率が高いことが分かります。
喫煙率 男性 女性 |
薬剤師 14.0 28.6 3.6 |
看護師 23.8 57.2 21.5 |
放射線技師 37.2 43.5 2.4 |
臨床検査技師 17.8 38.4 2.8 |
病院事務 16.7 44.2 8.3 |
これからどうなる?医療従事者の喫煙問題
筆者は、看護師として勤務した経験がありますが、ヤニで着色された歯を見て「あ、この同僚は吸っているな」という事はよくありました。
もちろん、勤務場所は医療機関であるため、勤務時間はおろか休憩中にもタバコを吸っていた人は見たことはありません。しかし、医師でない医療従事者も、禁煙指導にかかわる機会はありますから、しっかりお手本を示したいところ。医師の喫煙ゼロが達成されたら、今度は医療従事者がターゲットになる、なんてこともあるかもしれませんね。
8.まとめ
国民にとって身近な健康の専門家である医師ですが、タバコの害をよく知る一方で、タバコをやめられない人もいます。近年、医師の喫煙率は下がってきているものの、特殊な労働環境がストレスになり、ニコチン依存で苦しんでいる人もいます。
医師だからこそ、喫煙や受動喫煙の害は熟知しているはずですし、今後も国民の健康のお手本となるよう、医師たちの禁煙も応援していきたいですね。
引用:
- ※1:第4回(2012年) 日本医師会員喫煙意識調査報告について / http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120829_3.pdf
- ※2:厚生労働省 / 最新たばこ情報 / http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
- ※3:北村諭 / 医療従事者の喫煙問題を考える / http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/042070597j.pdf