高血圧の人は要注意!喫煙でリスクが増加する

会社や自治体の健康診断で高血圧を指摘された人の中には、喫煙している人もいるのではないでしょうか。高血圧というと、塩分の取り過ぎを控えることがポイントになりますが、禁煙をすることも対策となります。
この記事では、あまり聞き慣れない人も多い喫煙と高血圧の関係について紹介します。
1.高血圧とはどんな状態か?
高血圧は、血液が血管を押し出す力である血圧が高くなっている状態のことです。日本では約1000万人の人が高血圧で治療しており、推定の患者数を入れると、4300万人にも上るといわれています。
高血圧には大きく分けて、病気が直接の原因でなるものと、そうでないもの2つのタイプに分かれます。日本の高血圧の患者の9割が、後者の高血圧で本態性高血圧と呼ばれています。
本態性高血圧は原因が不明といわれるのですが、食生活や運動などふだんの生活習慣がからみ合って引き起こされるもので、実に身近な症状といえるでしょう。
2.血圧がいくつ以上であれば高血圧?
最近では、健康診断のときだけでなく、街中でも血圧を測れる機会が増えましたよね。血圧を測るときに「上がいくつ、下がいくつ」という言い方をしますが、これはそれぞれ収縮期血圧と拡張期血圧のことです。
心臓は収縮したり拡張したりすることで、全身に血液を流すポンプのような役割をしています。収縮期血圧は心臓が血液を押し出すときに、最も高くなる血圧の値で、拡張期血圧は、その後血液が全身に流れ込むときである、最も低い血圧の値となります。
収縮期血圧と拡張期血圧が以下のようになると、高血圧と診断されます。
- 収縮期血圧 140mmHg 以上
- 拡張期血圧 90mmH g 以上
高血圧というと、血圧の最高値である収縮期血圧ばかりに目が行きがちですが、拡張期血圧が高すぎても、高血圧の診断となるのが分かりますね。
3.高血圧だと何が起こる?
高血圧は中年以降になると、増加していく傾向にあります。その原因の1つに、年を重ねると、身体の老化により血管の弾力性を失っていくことがあります。血管に柔軟性があれば、心臓が血液を押し出すときに、血管が膨らむことができますが、血管の壁が固くなると、血管が膨らみづらくなることから、血圧が高くなりやすくなります。
高血圧の状態では、血管に負担がかかるため、そのダメージにより血管の壁が硬くなり、動脈硬化と呼ばれる状態になります。動脈硬化になると、さらに血圧が高くなるリスクは上がるという悪循環に陥るのです。
高血圧でなりやすい病気とは?
高血圧になると、いろいろな病気の原因になることがあります。
・脳卒中や虚血性心疾患
高血圧により動脈硬化が進むと、心臓に負担をかけるだけでなく、脳や心臓などの身体の重要な器官の血管が詰まったり、切れて出血するリスクが高まります。いわゆる、脳卒中、狭心症、心筋梗塞などの病気にあたりますが、これらの病気は命を落とす可能性もあります。
・腎臓病
高血圧の状態が続いて動脈硬化を起こすことで、腎臓の病気が引き起こされます。
4.高血圧は気づきにくい!
高血圧では頭痛などの症状が出ることがありますが、症状をあまり感じないケースも多くあります。そのため、脳や心臓、腎臓に問題が起きてから、高血圧に気づく人もいるほど。このことから、高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれています。
しかし最近では、病院などの医療機関に行かなくても、スポーツ施設や温泉施設など身近に血圧測定ができますし、家電用品店でも、電子式の血圧測定器が販売されています。日頃から自分の血圧が正常かどうかチェックするように習慣づけると、高血圧の早期発見につながりますよ。
5.喫煙で高血圧のリスクが上がる?
日本人に多いといわれる本態性高血圧の原因となる生活習慣には次のものがあります。
- 加齢による老化
- 塩分の取り過ぎ
- 肥満
- 運動不足
- ストレス
高血圧というと、まず「塩分の取り過ぎをやめましょう」といわれることが多いのですが、実はタバコも高血圧とかかわりのある生活習慣の1つです。
6.喫煙すると血圧が上がる
喫煙をすると、血圧や心拍が一時的に上昇することが分かっています。多くの人が知るタバコに含まれている有害物質には、ニコチンがあります。このニコチンには、交感神経を刺激する作用があります。交感神経は身体をアクティブなモードにする働きがあり、タバコを吸うと、次のような血圧の変化が見られるようになります。
- 収縮期血圧が20~30㎜Hg上がる
- 拡張期血圧が10㎜Hg上がる
- 心拍が20回前後増える
タバコを吸うことによる血圧の変化は個人によってまちまちです。また、タバコを吸っているから高血圧であるといいきれず、むしろ喫煙者は非喫煙者と比較して、血圧が低めという報告もあります(こちらは喫煙者では、体重が少ない傾向にあるためではないかと考えられています)。
しかし、タバコを1本1本吸う度に、血圧の上昇があるため、血管や心臓に負担がかかることは事実です。
7.高血圧の人が禁煙するメリット
血圧が高めの人や、すでに高血圧と診断された人がぜひ取り組んでほしいのが禁煙です。高血圧の原因には、さまざまな要因がかかわっていることがあるので、タバコをやめることですぐに血圧が下がるということにはならないかもしれません。
高血圧の人が禁煙をするメリットは、血圧の値よりも、動脈硬化のリスクを下げられるということ。動脈硬化は、血管の壁が固くなるほかにも、血液がドロドロになり血管の内腔が狭くなることも原因となります。
喫煙をすることで有害物質を取り組むと、血管の壁が傷つけられるだけでなく、血液の粘り気にかかわる物質が増加することが分かっています。
また、タバコを吸うと、動脈硬化によって起こりやすい虚血性心疾患になるリスクも高まります。タバコ煙と一緒に吸い込まれる一酸化炭素は、血液中の酸素を運ぶヘモグロビンと結びつきやすい性質があります。そのため、喫煙すると身体は酸素が不足しやすい状態に。
虚血性心疾患は、血液の流れに問題が起こって、酸素や栄養が行き届かなくなることで、心臓の細胞がダメージを受けることが起こります。
8.禁煙には体重コントロールも一緒に行おう
高血圧の人が禁煙する場合に、気をつけたいのが体重の増加です。禁煙をすると、一時的にストレスが増えたり、正常な食欲が戻ることから、喫煙前より体重が増えてしまったという人も少なくありません。
体重が増えても標準体重のうちならよいのですが、肥満になってしまっては、かえって高血圧や動脈硬化のリスクは上がる可能性もあります。
高血圧の人が禁煙に取り組む場合は、運動も一緒に行うなどして、禁煙後に体重が増えすぎないように気をつけましょう。もちろん、禁煙と体重コントロールの両方を行うのは、難しいという場合は、禁煙が成功したらダイエットに取り組んでもOK。
禁煙中の体重コントロールを行うには、次のポイントがあります。
- 毎日の生活に運動を取り入れる
- 野菜や果物を取り入れるようにする
- 口さみしいときは、ガムや昆布などカロリーの低い食品を口にする
9.まとめ
身近な生活習慣病である高血圧は、症状が気づきにくく、知らず知らずうちに動脈硬化が進行することがあります。動脈硬化は高血圧の悪循環を引き起こすだけでなく、心臓や脳などの重大な病気の原因になるものです。
禁煙によって高血圧がすぐに治るというわけではありません。しかし、喫煙には動脈硬化のリスクを高めるため、高血圧の人は禁煙にも取り組んでいきたいですね。